国際的な孤立を厭わない中国

国際的な孤立を厭わない中国
5/15(金) 8:00  川島博之 JB press
 ―南シナ海でこのような行動をとりながら、中国は海外にマスクを援助したり医師団を派遣したりするなど、国際社会において感謝される国になろうとしている。しかしマスクの援助は、かえって世界の反感を呼んだようだ。それは、世界に感染が広がり始めた時期に中国政府がマスクを強権的に買い占めて、世界中でマスクが不足する状況を作り出したとの噂が広がったからだ。その真偽は分からないが、中国政府が世界に信頼されていない証左であろう。また、中国の医療水準を考える時、医師団の派遣に感謝するのは貧しいアフリカの国ぐらいだ。

 そんな中国は、世界が新型コロナに揺れている中でも南シナ海に対するこだわりを捨てていない。捨てないどころか、一層強化している。

 このような中国の一連の行動は不可思議である。それは南シナ海の島々の領有権を強硬に主張することは、東南アジア諸国の中国に対する不信感を増大させ、かつ「航行の自由作戦」(FONOP)を行う米国や英国の不快感を助長するだけだからだ。

 中国が経済発展を遂げる上で工業製品の輸出、海外からの投資、そして海外からの技術の導入は欠かせない。そうであるなら、経済発展するためには世界の国々、特に米国や日本、西欧の国々とは良好な関係を保っていかなければならない。国際的に孤立すれば輸出が難しくなり、海外からの投資も減少する。それは経済の低迷につながる。その結果として失業率が上昇すれば、治安問題が深刻化する。それは中国共産党が最も恐れていることである。

 その一方で、南シナ海の島々の領有は中国にとって核心的な利害とは言いかねる。多くの民衆は南シナ海の領有にそれほどの関心はない。その一方で、新型コロナ問題やそれが引き起こした経済の低迷は民衆にとって切実な問題になっている。

 そうであるのなら、この時期においては、南シナ海の問題をそっとしておくのが上策であろう。しかし、中国はベトナムなどを怒らせる行為を次々に行っている。

「外征」が評価される中国の指導者

 なぜ中国はそのような行為に走るのであろうか。真の理由は分からない。周辺の状況から類推するしか方法がないのだが、第1に考えなければならないことは、経済がマイナス成長に陥る可能性が取り沙汰される中で、習近平の政権基盤が揺らいでいることだ。習近平は10年の任期が過ぎてもその地位に留まろうと考えている。しかし共産党内部にはそれを面白く思わない人々も多い。現在、そのような人々の声は日増しに大きくなっていると言われる。

 このような状況の中で、習近平にとって軍と公安部門の掌握は極めて重要な課題になっている。それが外交において軍を中心とした強硬派の勢いを強めている可能性がある。

 習近平の思考回路が軍の強行路線に近いことも考えられる。中国人は外征に成功した皇帝を高く評価する。漢の武帝や清の乾隆帝などの評価が高い。その一方で、長恨歌などを通じて日本でもよく知られている楊貴妃を寵愛した玄宗などは人気がない。

 就任直後に「中国の夢」をスローガンに掲げた習近平は、歴史に名を留めるためには外征に成功しなければならないと考えているのではないか。そのために、経済成長にとって「百害あって一利なし」の南シナ海の島々の領有にこだわっている可能性は大いに考えられる。

 日本にとって南シナ海の問題は他人事ではない。5月8日、中国の公船が尖閣列島周辺海域で日本漁船を追い回す事件が発生した。海上保安庁の巡視船が駆けつけて事なきを得たが、これも一歩間違えば、漁船が沈没して人命が失われる事件に発展した可能性がある。そうなれば日中関係は一気に悪化しよう。

 習近平が普通の神経の持ち主であれば、中国経済の悪化が危惧される中で、このような事件は起こしたくないと考えるはずだ。しかし習近平の頭の中は異なっているらしい。経済の安定よりも偉大な皇帝と思われる方が重要と考えているようだ。

 日本ではあまり報道されることはないが、南シナ海をめぐる中国とベトナムとの争いは中国の外交方針がどこか狂い始めたことを示している。それは軍部の強行路線を封じることができなかった戦前の日本外交を彷彿とさせる。今後、尖閣諸島周辺においても中国が予期せぬ危険な行動に出る可能性がある。南シナ海の緊張は他人事ではなくなっている。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200515-00060483-jbpressz-int&p=2

 

 

南シナ海諸島、尖閣諸島の占領も習皇帝の威光を高める。
習が中国人に偉大な皇帝と評価されるためにはどうしても尖閣を奪回しなければならない。
漢の武帝に倣って外征に成功しなければならぬ、そのためには武力衝突も厭わない。

外征は中国皇帝にとっては魅力ある。
いいかえれば膨張主義、住みやすい土地を求める、日本は彼らにとって価値がある。
中国人は昔から世界あちこちに進出、今や世界中で警戒される。